今回はタイで有名な書籍をご紹介いたします。
著者であるティプワニー・サニットウォンは1932年生まれの作家で、英語、フランス語、ドイツ語を勉強した知識人であり、造詣が深いタイの芸術・工芸品に関する書籍を何冊も執筆されました。
「祖父母がまだ子供だったとき」は、ラーマ6世およびラーマ7世の時代(1910~30年代)のタイの人々の生活やその中における知恵に関する短編集で既に廃刊となったサトリサーン紙に連載されました。
「祖父母がまだ子供だったとき」は1巻~4巻までありますが、第1巻の「香水」というお話をご紹介しましょう。
あるところにとても良い匂いのする男の子がいました。周りにいる友達は、なんで彼から良い匂いがするか不思議になり理由を聞きます。そこで彼は叔母さんの家に友達を連れていき、叔母さんから「ナムオッブ ナムプン」のことを教えてもらいます。
「ナムオッブ ナムプン」は語呂が良いので通常は1つの言葉として広まっておりますが、「ナムオップ(น้ำอบ)」と「ナムプン(น้ำปรุง)」という伝統的な2つの香水のことです。
お話の中で叔母さんは「ナムオップ」と「ナンプン」の作り方を子供に教えます。
「ナムオップ」はイランイランノキの花と香りの強い草木と一緒に焼き、それを雨水に混ぜて作られます(当時は各家に雨水を貯めておく大きな瓶がありました)。色は透き通った黄色になります。「ナンプン」はニーム(เนียม)と呼ばれる食物の葉をすり潰し、それに同じく雨水を混ぜて作られ緑色をしています。そしてお話の最後には出来上がったばかりの「ナムオップ」と「ナンプン」を子供たちが叔母さんから受け取って大喜びするというところで終わります。当時は西洋の香水はまだ人々の間に広まっておりませんでしたので、このように植物から採った香りを混ぜた水を文字どおり「香水」として使っていたようです。
現代では「ナンプン」はあまりポピュラーではなく、地方の土産物屋やネット通販などでしか手に入りませんが、「ナムオップ」はいろいろな香りが販売されています。一番人気が高い香りはヴァラリス・グラブラと呼ばれる夾竹桃科の植物の香りで、他にもミサキノハナ(พิกุล)、プッタチャート(พุทธชาด:ジャスミンの一種)の香りがポピュラーです。仏像に振りかけられるあの香水も「ナムオップ」です。
「祖父母がまだ子供だったとき」にはこのようなタイの人々の生活や文化が生き生きと描かれたお話が100話以上もあり、文化振興局による推薦書として小学校の教材として広く取り入れられている書籍の1つです。
書名:祖父母がまだ子供だったとき(เมื่อคุณตาคุณยายยังเด็ก)
著者:ティプワニー・サニットウォン・ナ・アユタヤ(ทิพย์วารี สนิทวงศ์ ณ อยุธยา)
出版社:(สำนักพิมพ์ศิลปาบรรณาคาร) 2013年
文責:Paphitchaya Sutham (Leen)